株式上場について
2025.02.06
2024年の国内新規上場企業数(IPO)は、前年の124社から10社増加し、134社となりました。この数字は過去10年間で2番目に多い記録であり、株式市場の堅調さが背景にあります。特に、東京メトロ(東京地下鉄)やキオクシアホールディングスなど、時価総1,000億円以上の大型上場が注目を集めました。
一方で、上場廃止企業数は94社に達し、上場企業数が初めて純減となる見通しです。この増減の背景には、経営の自由度向上を目的とした非公開化や、東証の市場改革による上場維持基準の厳格化などが影響していると考えられます。
全体として、2024年は新規上場企業数が増加し、特に大型案件が市場を賑わせた一方で、上場廃止企業数も増加し、市場全体の企業数が減少に転じた年となりました。
株式上場のメリット
・資金調達の拡大
公募増資や株式売却を通じて、大規模な資金調達が可能になります。得た資金を設備投資や新規事業の拡大、負債返済などに活用できます。
・信用力の向上
上 場することで企業の信用力が高まり、取引先や金融機関との関係が強化されます。認知度が向上し、新規顧客や優秀な人材を獲得しやすくなります。
・市場での企業価値評価
株価を通じて市場が企業価値を評価するため、客観的な指標が得られます。株価上昇によるブランド力向上や企業イメージの改善が期待できます。
・株式の流動性向上
創業者や株主が株式を売却しやすくなるため、株式の換金性が高まります。M&Aなどの事業拡大において、株式を交換材料として利用できます。
・従業員の士気向上
株式上場は従業員にとっても誇りとなり、モチベーションや採用力の向上につながります。ストックオプション制度などを通じて、従業員の長期的な貢献を引き出せます。
株式上場のデメリット
・上場コストの増加
上場時には多額の費用(引受手数料、監査費用など)がかかります。上場後も決算公告やIR活動、内部統制の整備などの継続的なコストが発生します。
・経営の自由度の制限
多くの株主の利益を考慮する必要があり、短期的な株価対策や配当方針が求められます。株主総会やアクティビスト(物言う株主)からの圧力を受ける場合があります。
・情報公開の義務
業績や事業計画などを公開する必要があり、競合他社に経営戦略を知られるリスクがあります。社内での情報管理が不十分だと、情報漏洩や法令違反のリスクもあります。
・短期的な業績へのプレッシャー
市場の期待に応えるため、四半期ごとの業績や株価に注力しすぎる可能性があります。長期的な経営計画が犠牲になるリスクがあります。
・オーナー支配の低下
株式の希薄化により、創業者やオーナーが経営権を失う可能性があります。特に敵対的買収や株主提案のリスクが高まります。
株式上場にはメリットとデメリットがあり、自社の経営目標や市場環境に基づいて慎重に判断する必要があります。資金調達やブランド強化を重視する企業にとって、株式上場は有効な手段ですが、コスト負担や経営の柔軟性低下を受け入れられるかどうかも考慮する必要があります。株式上場に興味がある方は、TACTグループスタッフまでお気軽にお声がけください。
松下幸之助氏は、生前、企業は「公器」であり、公器である以上、社会からの期待や信頼に応える責任があると述べています。単なる経済活動にとどまらず、道徳倫理に基づいた経営を行う必要があると説いています。株式上場するか否かを問わず、原理原則に従って正しい経営を行っていくことが企業存続の絶対条件といえます。正しい判断基準をもち、2025年が皆様の飛躍の年となることをお祈り申し上げます。
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